top of page

7.その他の対応

7.1 取り組みの効果を増大させるマスメディア向け会見について

 開発計画に対する問題点や地域住民が抱く懸念を拡散し、多くの人から共感を得るためには新聞やTVなどのマスメディアに取り上げてもらうことは非常に重要だ。住民がSNSやホームページで情報発信しているだけでは伝わらない人々へも情報が届き、そこから口コミやSNSなどでの再拡散が期待できるからである。そして、住民が抱く懸念への共感や支持が大きいほど、開発計画の関係企業や開発計画を審査する行政機関への世間の関心も高まり、開発計画の審査を行う行政機関は、見逃しや間違いが生じないように、より丁寧な審査を心がけることが期待できる。
​ ただし、マスメディアが発する情報は社会に大きな影響を及ぼすため、一方的で身勝手な主張や根拠のない主張は取り上げられない。
事実を整理し、自分たちの置かれた状況を理解してもらったうえで行動をおこした思いを伝える必要がある。

7-1

(1)記者会見までの手順

①会見予約

沖縄県の場合、県庁に記者クラブがあるので、幹事社に電話で確認し、会見場所を予約。

②会見の告知

会見概要をまとめたリリースを事前に記者クラブ宛に送付。

③会見資料作成

会見時にメディアに配布する資料。出席するメディアの部数のコピーを準備

④会見

出席者の紹介

会見資料の配布・解説

(2)具体例

1. 会見予約について

 石垣市内で会見を行う場合、八重山記者クラブが管理している会見会場はないので、自分たちで会場を確保する必要がある。

できれば、翌日が新聞休刊日の日程で会見を行わない方がいい。限られた誌面の中で2日分の記事が掲載されるため扱いが小さくなる可能性がある。また、夕方遅い時間に会見を行うと翌日の記事の締め切りまでの時間が短くゆとりのある原稿作成ができない可能性がある。

2. 会見の告知について

「会見のお知らせ」を作成。実際の会見に参加を促す内容。

 

2020.2.29 「白保リゾートホテル訴訟裁判判決・記者会見のお知らせ」

3. 会見資料

 会見は、資料の内容に沿って行う場合が多い。主張したい内容を目立たせ、理解しやすく、記事にしやすい項目建てを心がける。資料は会見後もひとり歩きする可能性が高いので、口頭での解説がなくても内容がしっかり伝わるようにまとめる必要がある。

 

 記者は、公平の期するために会見資料をもとに相手方からもコメントを得ようと問い合わせを行う。相手方の主張を先取りしたような内容をあらかじめ資料に盛り込んでおくと、場合によっては、記者がそれをもとに相手方に取材する可能性もある。

 

2020.1.28「訴訟の終結について」

2020.3.3「判決を受けて」

 

 会見後に会見資料について記者から問い合わせの電話が入る場合がある。会見資料には、問い合わせ先電話番号を必ず記載すること。

4. 会見

出来れば、複数人で行う。代理人弁護士がいる場合は同席してもらう。

訴訟の会見では、記者から「原告はどう考えているのか」と聞かれる場合がある。出席者それぞれが自分なりに考えをまとめておくとよい。

5. 会見記事にフォローアップ

会見についての記事がメディアに掲載されたら、ホームページやSNSで発信してたくさんの人と共有する。

7.2 組織作りと専門家の協力について

7-2

 開発に関わる問題点の検討や行政とのやり取りでは、生活環境や自然環境についての規制を調べたり、建築に関わる専門的な情報だったり、わかりにくい法律文章を参照しなければならない。訴訟になれば、代理人弁護士の力を借りなければならない。個人で活動するよりは組織の方が効果的な活動ができる。組織作りと専門家からの支援を取り付けるために必要なことについて、私たちの活動を振り返ってまとめた。

(1)まずは自分たちで地域の疑問や不安をまとめ、広く共有することから

 直面した開発などの問題についての住民の疑問や不安をまとめ、行政機関に質問し説明を聞くと、関連する法令や手続きを学ぶことができる。詳しくは行政機関のホームページ等で公開されているので、インターネットで検索して入手して共有することができる。ホームページやSNSを利用して問題を広く共有することで、開発事業や関係法令に詳しい人材も参加する可能性がある。

理由

  1. 地域住民の疑問や不安の声をまとめることは、専門知識がなくても使命感や問題意識があればできることなので、まずはそれに取り組むことが重要。関連する法令や手続きについての知識が乏しく、どう対処したらよいのかわからないことが多いとしても、集められた住民の不安や疑問を行政機関に示すことで、関連法令や手続きについて教えてもらうことができる。「わからないこと」について「わからないから教えてほしい」と言うことが大切。担当者の説明が難しかったら、「もっとわかりやすく、丁寧に説明してほしい。」と要望する。前述の通り、開発許可に係る手続きについて、行政機関は市民の理解を深め、必要な情報を提供することに努めることが都市計画法で定められているので、しっかりと仕事をしてもらおう。

  2. 専門家は、専門的な経験や情報を活用することで生計を立てている。住民が直面した開発に関わる問題について調査をしたり、専門的な見解を述べたりすることは、本来収入となるべきもので自らの業務とは別にして簡単にできることではない。安易に専門家に依存しないように注意したい。

  3. 自分たちの疑問や不安に関わる手続きや法令についての知識を持つことで、のちのち専門家に協力を依頼する際の負担軽減になり、取り組みもスムーズになる。

(2)組織作りと事例調査などの情報収集

 問題意識を共有できるメンバーで組織を作り、SNSやホームページで情報発信を始める。組織のメンバーは、性別、職業、年齢に偏りのない構成が望ましい。また、組織の規模を大きくすることを目指す場合には、意思決定のスピードが遅くならないように、少人数の執行機関を定めるなどの工夫が必要である。

 並行して、インターネット上のニュースや話題を検索し、自分たちと同じような開発に対する住民運動や環境NGOの取り組みについて参考になるような情報を収集する。組織では、活動の効率化と負担の集中を避け、なるべく活動の役割をメンバーで分担する。

理由

  1. 組織ができると、行政への要請や質問において、個人や一部の市民の意見ではなく、地域の合意形成を踏まえていることを示すことができる。地域の合意形成は、専門家や環境NGOへの相談する際にも必要な要件。

  2. 組織をつくり、ネット上での情報発信を行うと専門家に相談する際に問題や活動の実態が伝わりやすい。また、組織名義の口座を開設しておけば、資金が必要になった時に呼びかけしやすい。

  3. 自分たちが整理した疑問や不安をキーワードにネット上のニュースや話題を収集することで、類似の問題への取り組み方を参考にしたり、頼れそうな専門家や団体、環境NGOを見つけることができる。

(3)専門家への「相談」はダメもとで。

 開発計画への反対や中止を求める住民の取り組みは、現在でも様々な地域で行われている。しかし、残念ながらそういった問題に関わっている専門家や団体は限られている。専門家というのは、問題について詳しい研究者や法律家が含まれるが、物理的にも経済的にも相談される全ての問題に対応することは難しい状況であり、相談に対応してもらえない可能性が高いことも理解しておく必要がある。だからといって、相談を臆する必要はないので、相談は積極的におこない、情報の共有だけでもしてもらう価値はある。その相談を契機に別の専門家や団体につながる可能性もあるからだ。

(4)専門家への「依頼」は覚悟をもって。

 専門家に相談した結果、正式に依頼をする場合には組織の合意と覚悟が必要である。住民による自主的な取り組みは、手弁当でボランティアでも行えるが、専門家への依頼はそうはいかない。そもそも引き受けてくれる専門家は少なく、専門家の使命感や義務感に頼らざるを得ない状況がある。開発事業者は何億円もの予算をもとにその後も継続的に生まれる利益をもくろんで開発計画を進めているが、それに対する地域住民は、暮らしの平穏や美しい環境が失われるという損失を防ぐことを目的に取り組んでいるので、問題解決から得られる利益は見込めないし、そもそも予算を組んでいる事業ではないから、専門家の依頼に多額の費用をかけられない。

 専門家としては、求められる仕事に見合った経済的な利益が見込めない場合がほとんどだろう。それでも地域住民の依頼に応えてくれる専門家に感謝し、謝礼や報酬を支払うのは当然で、依頼する側としても任せっきりにするのではなく、自分たちとしてできることは何でも取り組んで、少しでも専門家の負担を軽減し、問題解決を目指す覚悟が必要になる。

 ただし、訴訟を提起する場合には、敗訴することも想定する必要はあるが、控訴するかどうかまでを事前に決める必要はない。

7.3 開発に関わる法律的な問題の相談先

7-3

 各県には、各地の弁護士会や地方自治体が設置している無料の法律相談窓口があるが、法律業務は多岐にわたるので弁護士にも取り扱い案件に偏りがあったり、得手不得手がある。なるべくなら自分たちが直面している問題に関心があり、詳しい弁護士に相談することが望ましい。参考までに、私たちが取り組んだ訴訟の代理人弁護士が所属している団体を紹介する。

「JELFは、法律的な知識や手段を使って、環境を保護する活動をしている法律家による全国ネットワーク組織(NGO)です。2017年現在、47都道府県に約460名の会員がいます。」(JELFホームページより)

7.4 地域住民による理解の向上のための取り組み

7-4

 地域の規模にもよるが、人口約1600人の白保集落でも問題点の継続的な周知をおこない、地域住民の理解の向上のための活動を行った。白保の場合は、空港問題で地域が二分されて争った過去のつらい歴史もあり、全ての地域住民から活動に賛同を受けていたわけではなかったからである。白保のような過去の争いがない地域であっても、地域住民の大多数が問題について最初から十分な理解をしているとは限らないので、継続的な問題の周知活動は、住民による取り組みへの支援を継続してもらうためにも非常に重要だ。

 

白保リゾートホテル問題連絡協議会だより vol.2 2020.2

​イベントでのパネル展示

7.4【完成】1枚目_page-0001.jpg
7.4【完成】2枚目_page-0001.jpg
7.4【完成】3枚目_page-0001.jpg
7.4【完成】4枚目_page-0001.jpg
bottom of page